冬の気候の違いについて考える(植物の耐寒性を考えるために)

植物まわり
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冬が深まってくると、やまね農園の周辺では朝の気温はマイナス5度よりも低くなり、霜が降り、霜柱が現れ、アスファルト面は凍結します。こんな環境になると、生きていけない植物も出てきます。の中でも植物たちはしっかりと生き続けています。

もちろんこの寒さに耐えられない植物もいます。最近では、売られているポット苗に耐寒温度が表示されているものも多く、私なんかはその情報をもとに庭に植えるか否かを決めたりしています。

しかしこの耐寒温度、調べれば調べるほどに統一されていないというか、バラバラなんですよね。

例えばその例としてすぐに思いつくのがオリーブです。オリーブの耐寒性について情報を集めるとばらつきが大きいです。−3度程度までだったり−10度までだったり、耐寒性が強いだったり弱いだったり、同じ品種でも耐寒温度に差があることが少なくないです。

おそらくそのどれもが間違った情報ではないのだと思います。しかしどうしてそんな違いが出てしまうのかというと、気温以外の要因が大きく影響するからだと思います。そういった点から、植物の耐寒性について考えてみます。

はじめに要点を記載しておきます

重要なのは、耐寒性だけでなく、

  • その植物がどのような状態で植えられているか、鉢なのか露地なのか
  • 植えられた状態で、どのような気候・天候に晒されているのか
  • 寒さに対応できる能力の有無

主にこの3点に集約されると思います。この三点についての状況の違いによって、どれだけの耐寒性が求められるかが変わってくるのだと思います。

気温と、気温以外の要因について考える

夏の日本の気候は、特に本州においては大きな違いはないと思います。湿度は高く、暑い。標高による違いや、夜の気温の下がり方には多少差があるかもしれませんが、日本の夏といえば「蒸し暑い」ということで概ね一致しています。

一方冬はどうでしょうか。日本各地寒くなるでしょうが、その寒さの中身には大きな違いがあります。

始めにいくつか資料を見ていただこうと思います。

茨城県の水戸市と笠間市、そして新潟市を比較する

ここに3都市の気象データを載せたいと思います。茨城県水戸市、茨城県笠間市、新潟市です。当やまね農園は水戸市にありますが、気象条件は笠間市により近いと考えています。笠間市は水戸市の西隣、内陸側にあります。

今回は冬についてなので、特に最低気温に注目してください。笠間は一部観測データがないのですがご了承を。

茨城県水戸市の2019年の気候

出典:気象庁https://www.jma.go.jp/jma/

茨城県笠間市の2019年の気候

出典:気象庁https://www.jma.go.jp/jma/

新潟県新潟市の2019年の気候

出典:気象庁https://www.jma.go.jp/jma/

3都市の1月の天気の比較

真冬である1月についてみてみましょう。

2019年1月降水量平均気温最高気温最低気温最高気温平均最低気温平均平均湿度最小湿度日照時間
水戸9.0mm3.4℃14.4℃-5.8℃10.1℃-2.5℃53%16%238.9時間
笠間6.5mm2.2℃13.7℃-8.0℃9.9℃-4.9℃224.4時間
新潟150.0mm3.0℃9.4℃-1.4℃6.2℃0.5℃75%35%51.9時間
気温

数値的には1月全体の平均気温が低いのは茨城県笠間市で、新潟、水戸と続きます。笠間市は最低気温が−8度にもなり、平均最低気温も−4.9度とかなり冷え込むことがわかります。水戸は笠間より少し寒さが弱いくらいの感じでしょうか。そして日中は10度以上気温が上昇します。温度差が大きいことがわかります。

一方新潟市は、最低気温はそこまで下がりませんが、最高気温もあまり上がらず1日を通して近い気温で推移するのがわかります。

雨と日照

これには大きな違いがあります。1月の新潟市の日照時間は51.9時間と極端に少ないことがわかります。つまりほとんど晴れ間なく、乾燥するような時間がないということでもあります。ちなみに新潟市では降雪もあります。降雪は、積雪すれば残るということです。水戸市や笠間市のように日照時間が多い地域は積雪しても日光で溶けていきます。しかし新潟では晴れ間が少ないので雪は残り続けます。

湿度は相対湿度であること、また昼夜の寒暖差に注意

まず、天気予報で使われる湿度には気をつけなければいけないポイントがあります。

それが「相対湿度」というもの。同じ体積の空気中に含まれることのできる水分量は、温度が高ければ多くなり、低くなれば少なくなります。つまり、夏35度の湿度50%と冬10度の湿度50%では、夏35度の湿度50%の方がおなじ空気量の中に含まれる水分量は多いのです。なので気温が低いということは、それだけで空気中水分量の最大値は低くなるのですが、そんな寒い時期に湿度20%なんていうと本当にカラカラに乾いた空気ということになります。

2019年の新潟では、最低湿度が35%という日もあったようですが、平均が75%であったことからも基本的に冬の湿度は高いと考えていいでしょう。

一方で北関東の水戸市では53%と思ったほど低くありません。冬の関東といえばカラカラの空気のはず。実際は以外と乾燥していないのでは、と思ってしまうかもしれませんが、このときに気をつけて見て欲しいのが昼夜の温度差です。昼夜の寒暖差が大きいということは、相対湿度の変化も大きいということです。夜、気温が下がるに伴って、相対湿度も下がっていきます。空気に含まれている水分量はもともと少ないので(日中がカラカラなので)その水分の多くは空気中に留まります。そして夜が明け太陽の光に照らされると、気温は上昇し相対湿度も高くなるのですが、空気中に含まれる水分量は基本的に変わらないためにカラカラの乾いた空気になるという訳です。

三都市で必要とされる耐寒性について考える

新潟市の場合

まず、最も最低気温が「高かった」のは新潟市。最低気温は平均で0.5度、最も寒かった日でも−1.4度と、さほど寒いようには思えません。では、新潟では耐寒性の強くない植物、0度程度のものは露地植えで冬越しできるのでしょうか?

これはですね、まったくわかりません!申し訳ない。ただ以下のようなことは考えられます。

  1. 雪や霜は水分が凍結したものなので0度より低い状態のもの。それが付着するということは表面の体温を奪い、また同時に低い温度の状態に保ってしまうということ。
  2. 降水(降雪)があるということは土壌が湿った状態に保たれやすく、また過剰な水分に浸される可能性もあるということ
  3. 日照時間が短いということは、植物の体を温める機会が非常に少なく、また土壌も冷たいままで乾きにくいということ
  4. 土に多く含まれる水分が凍ったりすることで根にダメージを与える
  5. 過湿になった土の中で根が窒息し根腐れする

以上のようなことが考えられます。実際はどうなのかわかりませんが、上記のようなことを考えると、にいい方で地植えする植物は耐寒性だけでない他の要素も考えなくてはいけないようです。

なので、地植えする植物の育て方は非常に難しそうな気がします。

水戸市と笠間市の場合

水戸市と笠間市はほとんど似たような環境といえるでしょう。しかし笠間市の方が平均最低気温は2.4度ほど低い−4.9度です。この差をどのように気にすれば良いでしょうか。

注意しなければいけない点は以下のようなものでしょう

  1. 土の凍結(霜、霜柱を含む)が起きないようにする
  2. 土の適度な湿りを保つ(おそらく乾燥気味が良い)
  3. 日差しと風による葉や幹の乾燥に気をつける

上記のこと、どうでしょう、新潟の気候であったら到底不可能に思えてしまうようなことですが、日照時間が長く乾燥の強い関東の冬であったら割と簡単にできそうじゃないですか?乾燥しているのがベースであれば、適度に水分を与えてあげればいいですし、凍結が心配であれば、マルチングしてあげれば良い。をしっかり対策するとなると、やはりマルチングと寒冷紗でしっかり覆うことになるのでしょうが、新潟に比べるとどうでしょう、管理しやすそうに思えませんか?

なぜなら、「乾燥している」からです。一度湿ってしまった土壌を乾燥させるには、数日の晴天が必要ですがおそらく新潟では望めないでしょう。しかし関東では晴天で乾燥した空気というのが通常の冬の気候なので、もしも水分が必要であるならば時間帯に気をつけて水を与えればいいですし、心配であればマルチングを施すことによって、土壌の適度な湿度を保つことができると同時に、土の温度低下を防ぎ、霜や霜柱の発生を抑え、根が傷つくのを防ぐことができます。

まとめ 耐寒温度よりも植物が植えられている環境を考えることが大事

寒くなると光合成もあまりできなくなり、植物の活動は低下したり、休眠したりします。そのときに、イオン以外の環境についてどんなものであるのが良いのか考えることが重要です。

つまり、そこさえクリアできれば、意外と多くの植物を冬越しさせることができるのではないか、なんて考えていますが、次回に、植物がどのようにして冬の寒さを乗り切るのか、について考察した上で、もう一度考えてみたいと思います。