冬になってもしっかりと葉を茂らせている常緑樹もいいけど、やっぱり秋の紅葉を楽しみたい。そう考えて庭に紅葉の美しいことで知られている樹木を植える方は多いのではないでしょうか。
私もその1人で、2020年の秋にいくつかの紅葉・黄葉する落葉樹を植え付けました、実はもっと以前、今のようにしっかりと庭や畑のことをやるようになる前に一本の紅葉を植えました。初めは30cm程度の苗木でしたか、あれから3年ほど経ち、随分と大きくなりました。
しかし、一向に紅葉しません。夏の緑は美しいのですが、秋が深まり寒くなっても、紅葉することなく緑色のままだったり、一気に枯れ色に変わって散ってしまうのでした。2020年の秋も、紅葉する気配を全く見せないので、落葉し始めた頃を見計って移植してしまいました。
今回はそんな悩み、どうして紅葉しないかという疑問について、やまね農園に植えてあるモミジを例に、その答えを探ってみました。
うちの庭のモミジの成長記録はこちらから。
葉の仕組みについての簡単な解説
光合成の主役、クロロフィル
植物の葉の一番の仕事は光合成をすることです。浴びた光、空気中の二酸化炭素、そして根から吸い上げた水分を利用して、植物自身の食料となるエネルギーを作るプロセスのことです。この時に中心となるのが、葉に含まれる物質である葉緑素=クロロフィルであり、それが緑色に見える物質なのです。
このクロロフィルは一つの葉の中で常に同じものが落葉するまでそこにあるわけではなく、人間の細胞のように分解され、また合成されています。
緑色のクロロフィルと赤色のアントシアン
それでは葉の色が赤い植物は光合成をしないのでしょうか。実はそんなことはありません。赤く見えるのは、葉の表面に赤く見える物質があるためで、光に対するフィルターのような役割を担っています。その内側にはしっかりとクロロフィルがあり、赤く見える物質によって余分を取り除かれた光が、中のクロロフィルまで届き光合成が行われているようです。
よく、新芽や新葉が赤い植物がありますが、これは表面を赤く覆うことでまだ弱い状態の葉や芽を過剰な光から守るためのもののようです。また、夏などに過剰な日光にさらされる期間が続くと葉が赤く色づいてくるのは、自己防衛のために植物がこの色素を作り出すからだそうです。
ちなみにこの赤い素のフィルターの役割をしている赤い色素の物質をアントシアンといいます。
黄色い色素のカロテノイド
もう一つ光合成に主要な働きをしている物質にカロテノイドがあります。カロテノイドは黄色〜オレンジ色をした色素で、光合成の時に光を集める助けをしたり、過剰な光を遮ったり、酸化作用を抑える働きなどをします。クロロフィルほど多く含まれていないので、葉の表面に黄色く現れていることは多くありません。
クロロフィル・アントシアン・カロテノイドの3つが紅葉に重要
緑のクロロフィル、赤のアントシアン、黄色のカロテノイド、この3つが紅葉を生み出します。
紅葉・黄葉の仕組みについての簡単な解説
クロロフィルが分解され消えていく
秋が深まってくると、気温は下がり、日照時間も短くなります。クロロフィルは日の光があっても、気温が低いと光合成をすることができなくなります。しかし光合成ができないのにもかかわらず太陽の光は吸収してしまいます。この状態はクロロフィル の分解を促進する活性酸素を発生させ、速やかにクロロフィル を消失させていきます。これによって今までクロロフィル の緑が消え、隠れていたカロテノイドの黄色がみえるようになってくるのです。
緑から黄色へ 黄葉
カロテノイドはクロロフィルとは違い、光合成ができない状態になって発生する活性酸素によって分解されることはありません。そのため黄葉として黄色く色づかせるのです。
また、木によっては、黄色く色づいた後に紅く紅葉する木もあります。紅葉した後に、次の項目で解説する「離層が形成され、葉にとどまった養分がアントシアンに変わっていく」という反応が起こるからです。
ちなみに銀杏(いちょう)は黄葉で散ってしまい紅葉しませんが、イチョウの葉にはアントシアニン を合成するための物質がないために紅く色づくことはないそうです。
緑から赤へ 紅葉
もともとカロテノイドの含有量が少ない木が紅葉する場合は、緑から赤へと変化します。
光合成できる環境がなくなると、植物はクロロフィルの再生産を止めると同時に葉の付け根の部分に離層(りそう)と呼ばれる組織を作り、葉と枝の間の水分や養分の行き来を妨げるようになります。すると、少ないながらもまだ残っているクロロフィルが生成する糖が葉に溜まっていきます。それが日光(の紫外線)を浴びることによって化学反応を起こし、赤い色素であるアントシアンが作られていきます。
こうして、緑のクロロフィルが分解されていく一方で、赤のアントシアンが生成されていくので、葉っぱは赤く紅く紅葉していくのです。
褐葉(かつよう)について2つの説
紅葉の中の一つとして「褐葉(かつよう)」というものが分けられることがある。これは秋になっての紅葉が褐色、すなわち茶色っぽくなるものを表しています。いわゆる枯れ色ってやつですね。
この褐葉ってやつの仕組みは、黄葉と似た過程で、黄色のカロテノイドの代わりに、茶色の色素を持つフロバフェンという物質が目立つようになるからだという説があるようですが、私としては緑から紅へと変わるプロセスに近いのではないかと考えています。
色鮮やかに紅葉するには
離層が形成されること
まずは植物が寒さを感じ、離層を形成すること。できれば日の光が当たりやすい時期、あまり秋が深まりすぎる前に離層を形成したほうが、のちの糖やアントシアンの生成しやすい条件(太陽の光が当たりやすい)になります。早い時期、夜にしっかり気温が下がることが重要になりそうです。
糖がたっぷり蓄えられること
離層が形成され、養分・水分の行き来が止まった後には、残っていたものと、まだ消えていないクロロフィル によって生成される糖が蓄積されていきます。ここで蓄えられる糖の量が、赤い色素のアントシアン の合成量に直結します。赤い色素が多いほど深い紅い紅葉になります。
乾燥で葉っぱが乾かないこと
そして最後にあげるのは「適湿」であることです。乾燥は植物の葉にとっては大敵です。過剰な乾燥にさらされた葉は、紅葉する前、あるいは紅葉の早い段階で枯れ散ってしまいます。
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