冬も深まり寒くなると、氷点下になることも珍しくありません。氷点下といえば水が凍り始める温度です。
体の多くを水分で構成している植物ですが、氷点下だからといって水と同じように凍結してしまうわけではありません。植物には凍結から身を守り、厳しい寒さをやり過ごす業を身につけています。
しかしこの辺りの植物の機能は複雑で難しく、またまだわかっていないことも多くあるようです。
なので、あくまで私なりの解釈での解説になりますのでお気をつけください。それほど外していないとは思いますが、あくまで、参考程度に。
すべては光合成から
ほとんどの植物にとって光合成は欠かすことができません。植物は光合成をすることによってエネルギーを得ています。光合成は葉で行われますが必要なのは、
- ある程度の暖かい気温
- 水
- 二酸化炭素
- 光
です。この要素の中で、気温と光は季節によっての大きく変化します。冬は太陽が地上に出ている時間が短い上に、新潟のように雲が厚く太陽が隠されてしまう日が多い地域もあります。
そうなると植物は光合成を天気がよい気温の上がる日中だけにしかできなくなってきます。
光合成でエネルギーを多く得られなくなると休眠態勢になる落葉樹
そしてこの光合成をして生成できるエネルギー量に比べて、光合成するための葉を維持するために消費するエネルギー量が上回った時、植物は葉を捨て、光合成を止めます。
こうして葉を落として光合成を止めると同時に葉からの水分の蒸発を無くし、養分の消費を抑える体勢に入り、休眠状態になります。
これが落葉樹の冬対策になります。
しかし葉を落として休眠状態になったからと言って、他の部分、枝や幹が凍結して枯れてしまうのではないかという疑問も湧いてきます。それについては ”凍結しない仕組み” で後述します。
耐寒性の弱い常緑樹
例えばシマトネリコという木があります。この木は台湾や沖縄などかなり温暖な地に自生する常緑樹です。このような木は冬の寒さに備える必要のない地域で自生しているので、基本的に落葉する必要がありません。つまり、通年で光合成するように育つ木なのです。
しかしこのシマトネリコ、寒い地域に植栽すると冬に落葉することは珍しくないようです。おそらく低い気温で光合成ができないため、自分の身を守るために葉を落とすものと思われます。落葉樹が葉を散らすのと同じように養分消費と水分蒸発を避けるためです。しかし葉を落としても、さらに強い寒さに晒されると枯れてしまうことがあります。これは自らの一部を凍結して冬を乗り切る能力が備わっていないからだと考えられます、推測ですが。この自らの一部を凍結することについては ”凍結しない仕組み” で後述します。
耐寒性の強い常緑樹
耐寒性の強い常緑樹の代表的なものといえば、松や杉など針のように細い葉をつける針葉樹です。これらの樹木は特に強く、冬のかなり寒い時期であっても詩っっかりと葉をたたえていいます。また、針葉樹ほど耐寒性はないものの、シラカシなどの常緑の広葉樹もあります。なぜ凍結しないのでしょうか?
凍結しない仕組み
クチクラ層
常緑樹の葉の表面はクチクラ層と言われる油分を伴った膜で覆われているため水分の蒸発が抑えられます。そしてそういった機能を備えた葉を残すことに費やされるエネルギーは、一旦葉を落として新葉を付けることに費やされるエネルギー量と比較してより効率的であることから、残すようになったようです。
細胞内水分に多くの物質を溶け込ませることと、細胞外凍結、過冷却
しかしそうはいっても、例えばやまね農園のある地では−10℃近くまで下がることもあるのですが、そんな寒さの中では凍ってしまうのでは?と思われる方もいるかもしれません。実は、凍っていることがあります。そしてこの凍ることそのものが、耐寒性を高める機能を有することがあるのです。
まず植物の体をイメージした画像をご覧ください。
上の画像の六角形のものが一つの細胞と考えてください。赤い丸は核、細胞と細胞の間にある緑色の通路をここでは「細胞外」とします。
耐寒性の備えた植物は寒くなると細胞内に溶け込む物質の量を増やします。そうすることによって水としての純度が下がり、ちょうど0℃で凍結し始める水よりも低い温度でないと凍結しない状態にします。もしも細胞内が凍結してしまうと、細胞は死んでしまい、植物は枯れていってしまうことになります。
さて、細胞内がいろんな物質の溶け込んだ水分満たされている一方で、画像では緑色の通路のようになっている細胞外は、細胞内から排出された水蒸気で満たされています。細胞内は水分を細胞外へと排出することでも、より細胞内の物質濃度を高めています。この細胞外は水蒸気で満たされているので、つまり純水に近いもので満たされていると言うことになります。水蒸気になる時には溶け込んだ物質と分離するので。
この純粋に近い水蒸気は、もちろん0℃付近で凍結し始めることになります。これを細胞外凍結と言います。そして細胞外に氷ができると、その周りにある水分はその氷にどんどんと引き寄せられていきます。それは細胞内の水分も引き寄せるので、細胞内の水分が減り含まれる物質濃度はどんどんと高まっていくことになり、より凍結しにくい状態となります。
また深過冷却と言われる現象もあります。過冷却という全体を動かないようにゆっくりと冷やしていくことをすると、通常なら氷になるはずなのに水のままの状態でいることです。これは、水が氷になるには温度という条件だけでなく、氷になるためのきっかけをつくるために動きが必要という現象を逆手にとったもので、低温になっていく過程で水分お動きを全く生じさせないようにして凍結を防ぐというものです。
この他にも植物が寒さを凌ぐための仕組みはあるようですが、かなり複雑でまだ詳細がわかっていないことも多いようなのでこの辺で終わりたいと思います。ですが最後に一つだけ。
じっくりと時間をかけて寒さに慣れさせると、耐寒性を身に着ける
元々備わって使わずにいた能力を発揮するのかもしれませんが、徐々に寒さに慣れさせると耐寒性が強くなっていくこともあるようです。こうやって環境に適応していくのはまさに生き物の特徴ですね。