紅葉の花木として育て始めたブルーベリーのラビットアイ。植え付けた時は、実がなることがおまけくらいの考えでいたのですが、育て始めるとその実を楽しみたくなってきました。また、ブルーベリーには主に3つの系統あるのですが、それぞれの系統の中にたくさんの品種があり、さらには同系統の中での品種でも個性の違いが大きいといいます。
ということで、ここではブルーベリーを選ぶ前に知っておきたいことをまとめておきますが、ほぼ私見であり、試しながら育てている現状なので、特に育て方についてはあくまで参考にする程度をおすすめします。
ちなみに当農園ではラビットアイ の9品種を育てています。
系統と品種のこと
品種の前に系統を選ぶ
ブルーベリーで気をつけなければいけないのは、品種の前に「系統」というものでも分けられていることに注意が必要です。この系統どんなものなのかを解説すると、
そのルーツ(由来)によって分けられる
というものです。大きく分けると次の2種に分けられます。
1、北アメリカの北東海岸に自生するものから由来するハイブッシュ系(品種改良したものをノーザンハイブッシュ と呼ぶ)
2、北アメリカ南部の河川や沼地近くに自生するラビットアイ 系
そして
3、ハイブッシュの特性をもちつつ、南部でも育てられるように開発されたのがサザンハイブッシュ 系
この3系統に分けられます。そしてそれぞれの系統ごとに品種があります。
そしてブルーベリーは他家受粉と言って、自分の木だけでは実をつけにくく、別の品種の木から受粉することで実をつけやすくなる性質があります。この時に注意していただきたいのが、
受粉用に別の木を用意する時、同じ系統の中から別の品種を選ばなければいけない
ということです。他の系統の中から受粉樹を選ばないように注意してください。そしてまた、
同じ系統の中でも、受粉しにくい品種とそうでない品種がある
ということも覚えていてください。これはおそらく、品種改良する上での遺伝子的な要素なのだと思いますが、この辺りはgoogleで「品種名 受粉 相性」などという感じで検索してみてください。
ハイブッシュ系(ノーザンハイブッシュ系)
ハイブッシュ系のブルーベリーは北アメリカ北東海岸に自生していたこともあって、寒さに対して非常に強い性質を持つ反面、暑さには弱いという特性があります。また、生育に適応する土壌の条件が非常に狭く、強い酸度を必要とします。
このハイブッシュ系をより栽培に適したものを開発し生まれてきたものの中で、寒冷地での栽培に適した品種をノーザンハイブッシュと呼ぶようになったようです。
先にもあげたように、まず寒冷地であることが栽培の条件であるため、東北以北や本州でも高地での栽培が適しているようです。また適応する土壌酸度はph4.5前後と非常に狭く、このことも日本での栽培を難しくしている要因になっているようです。
代表的な品種:ブルーレイ、ダロウ、デューク、デキシーなど
ラビットアイ 系
ラビットアイ 系のブルーベリーは、北アメリカ南部に自生する品種から由来するものなので、冬が温暖地域での栽培が適しています。とはいえ、日本で置き換えて考えるとかなりの広範囲での冬の気候に耐えられるので、栽培可能地域は非常に幅広く、東北南部から九州南部までで育てられています。
ラビットアイ という名の由来になったのは、熟す直前の実がウサギの目のような赤色をしているからだと言われています。その赤色の実が深い青紫色になると熟したサインになります。
またラビットアイ は、土壌の適応範囲が広いことも足られています。ハイブッシュ系のブルーベリーの土壌酸度がph4.5前後と狭い範囲なのに比べて、ラビットアイ はph4.3〜5.3と幅広く適応します。また、乾燥にも比較的強いため、非常に管理が楽な系統です。当農園では、この「管理が楽」という点からラビットアイ 系のブルーベリーを育てることにしました。
ただ注意点をあげると、樹勢が強いため、土中から新しく出てくる芽(サッカー)や、枝や幹の中途半端な位置から新しい芽が出てくる(シュート)が旺盛なので、適宜剪定して、木が大きくなることばかりに養分を取られないように管理する必要があります。
代表的な品種:ティフブルー、ブライトウェル、クライマックス、ホームベルなど
サザンハイブッシュ 系
サザンハイブッシュ 系は、もともと冬が寒い地域でしか自生していないハイブッシュ系を、温暖な地域でも栽培できるようにと開発されたものを言います。なので、ハイブッシュという言葉が含まれたはいますが、寒冷地では育てることができません。
栽培できる地域はラビットアイ とほぼ同じで、東北南部以南ということですが、土壌の酸度はハイブッシュと同じph4.5前後と狭く、また乾燥にも弱いため育てるのは難しいようです。
ただし、味は抜群に良いらしいです(食べたことない。。)
代表品種:オニール、サファイアなど
育て方について
ブルーベリーは先に述べたように酸性の土壌を好みます。このため、鉢植えでの栽培の方が間違いなく育てやすいと思います。ただし、鉢植えで育てるということは、水やりなどの管理が大変ということでもあります。特にブルーベリーは水を好む性質を持っています。鉢植えの場合はこのあたりを覚悟しておく必要はあると思います。
私のところでは地植えにしているので、どこまでの範囲をブルーベリーにあった土にするのかの判断が難しいです。しかし逆にその難しさを利用して、かなりざっくりとした土づくりで植物の適応力を利用しているのですが、こちらも後半に紹介します。
ラビットアイ に関しては適応土壌の範囲も広いので地植えでも比較的育てやすいといえそうです。この辺りは当農園の成長記録を参考にしていただくと幸いです。
一般的な、ピートモス主体の土の作り方
ブルーベリーを育てる土を自作する場合、多くの方が利用するのが「ピートモス」です。ピートモスとは、苔や植物が堆積し腐食して泥状になったものから水分を抜き取ったもので、強い酸性であることが特徴です。また、非常に保水性が良いので、水を好む植物によく持ちいいられます。
また、最も簡単なのは「ブルーベリー用土」を使うことなので、土づくりに興味がなければ専用土を購入してしまいましょう。(ただしパッケージに表示されている酸性度のチェックは忘れずに)
ピートモスを使う場合の注意点
- 成分無調整(酸度が強いもの、phが低いもの)を使うこと
- 他の土とブレンドしたりする前に、単品をしっかり水と混ぜ合わせること
- 一度乾燥し切ってしまうと、水を給水しにくくなってしまうので、水分を欠かさないこと
1について。ピートモスは土壌改良剤として使われることがあり、その場合強い酸度が不要になります。そのため、土壌改良剤用として成分を調整して酸度を中性に寄せたものが市販されています。ブルーベリーで使うのは酸度が無調整のものです。お気をつけください。成分無調整ピートモスの酸度はph4.0程度のものが多いようです。
2について。ピートモスは乾燥した状態で販売されていますが、初めはジョウロなどで水を与えても全くと言っていいほど水を吸いません。なので、使用前に一度単品で水と混ぜ合わせてしっかり吸水させる必要があります。
3について。ピードモスが乾き切ってしまうと、初めの状態に戻ってしまい水を吸わなくなってしまいます。そのため、常に水分を含んでいる状態を保つ必要があります。
大きくは以上の3点を気をつける必要があります。
一般的な作り方は鹿沼土と混ぜる
ピートモスだけでは根の生育に適した環境にならないので、他の土とブレンドします。この時によく使われるのが鹿沼土です。この鹿沼土の特徴は
- 酸度が酸性寄り(ph4〜ph5程度)
- 排水性・通気性に優れている
以上が鹿沼土の特徴です。
この鹿沼土とピートモスをブレンドし、混ぜ合わせたph(酸度)をそれぞれの系統のブルーベリーにあった数値に合わせていくのが一般的なブルーベリーの用土の作り方のようです。
硫黄を使った土づくりでの栽培
当農園のブルーベリーは、適応phの範囲が広く育てやすいラビットアイ 系統に絞って栽培しています。そのため、土づくりもかなりざっくりしたものになっています。参考にしたのはこちらの書籍。
この本の中では土の酸性度を強めるために硫黄粉を使用する方法が解説してあります。簡単にいうと、植え付けの際に株元に硫黄の粉をご飯茶碗1杯ほど撒くというもの。その後に腐葉土などで株元を分厚くマルチング することで水切れを防ぎ、植え付け時に灌水させた後は時々硫黄粉を追加して撒く以外は自然に任せて育てるというものです。
やまね農園でも、地植えする際、元々の土に適当な分量の腐葉土を混ぜた後、表面にご飯茶碗いっぱいくらいの硫黄粉を撒いて軽く混ぜ合わせた後、腐葉土やバーク堆肥、近くにある枯れ草や枯れ葉などで株元を覆うという方法で植え付けています。
鉢植えの場合でもこまめに水やりをすることで、この硫黄粉を使った用土で栽培することは可能だと思います。
当然この方法でやる場合は、酸度のチェックを定期的にやらなくてはいけないのでしょうが、実はまだやっていないんですよね。。というのも、酸度計で正確な数値を計測するというのはなかなか難しいようなので。なので今のところは樹の状態を見つつ、硫黄粉の量だけで酸度を作っているということになります。
ちなみにこの硫黄粉、ホームセンターでも置いてあるところは少ないと思うので、通販で手に入れるのが探す手間も省けるのでお勧めです。私は茨城県にある「農家の店 しんしん」というところで購入しました。ホームセンターでは見つけられませんでした。
硫黄粉剤80 3kg
硫黄の粉は色々あるみたいですが、上記のものは硫黄成分が80%程度のもの。50%程度のものや100%に近いものもありますので、手に入った製品濃度に合わせて撒く量も調整すると良いと思います。は基本、茶碗一杯という感じでざっくり適当にやってしまいます。
水やりについて
ブルーベリーの根は細かく浅いところに張るのですが、そのくせ乾燥には弱いという特徴があります。かと言って過湿な状態も良くないので、適度な湿り気を保てるようにする必要があります。
この対策としてマルチング を施すのが有効です。マルチング とは、植物の株元の土の表面を、何かしらの素材で覆うことと言います。保温効果を高めたい時などはビニール素材を用いることもありますが、ブルーベリーの場合は陽が当たることなどでの過剰な乾燥を防ぐことにありますので、自然由来のものを利用するのが適しています。
代表的なものに、腐葉土、バーク堆肥、ヤシの繊維材、ウッドチップなどがありますが、発酵するようなものでなければ良いのではないかと思います。
ただ、地植えで水やりをしないど根性栽培であればであれば分厚くマルチング するだけで良いのですが、鉢植えの場合は水切れのタイミングが分かりにくくなるので、水のあげすぎ、あげなさすぎには気をつける必要があります。
肥料について(あるいは酸度維持について)
植え付け時、また植え付けてからしばらくして与える肥料ですが、植え付けた環境によって必要な肥料分量は変わってきます。
露地植えの場合
露地植えの場合、雑草が生えないようにマルチングしてあったり、痩せた土でなければ追加で肥料を与える必要はないのでは、というのが私の考えです。と言っても、肥料になる物質を取り除いていないことが前提です。一番重要なのは、夏などは地表に生えた雑草を刈った後に、それを生えていた場所に残し堆肥化させ、土中を多様性で溢れた環境にすることです(多様性が大事)。ミミズや微生物そして植物がバランスよく暮らせる環境が良いのではと考えます。
関東は、関東ローム層と呼ばれる栄養分が豊富な黒土な土地が多いので上記のような管理で良いでしょうが、他の地域で痩せ気味な土だと感じる場合は年に1回、成育が始まる直前の2〜3月頃に与えるのが良いと思います。そして与える肥料の種類は油かす(完熟しているものに限ります)のような有機肥料を、その商品のパッケージを参考に与えれば良いのではと思います。
ブルーベリーは酸性の土で育てるので、そこに化成肥料を与えることで、逆にアルカリ性へと傾いてしまうことがあるようなので注意が必要です。
酸性を保つことについては、ピートモスを定期的に追加するという方法もあるようですが、掘り起こすわけにもいかないので、硫黄の粉を1年に1回ほど株元周囲に振りかける程度のことで良いと思います。こちらも樹の状態を見て問題なさそうであれば、飯碗1杯程度と大体な感じで。
鉢植えの場合
鉢植えの場合は気をつけるポイントが多いようです。以下に挙げると、
- 鉢植えは2〜3年で根詰まりするのでその都度一回り大きな鉢に植え替える必要がある
- 植え替えのタイミングで土を入れかえれば、酸度についてはOK
- 肥料は年2回を目安に、休眠期終わる直前の2〜3月頃と実が熟し始める前の6月頃
- 酸性土壌との反応を避けるために有機肥料と用い、パッケージの通りに施肥するのがおすすめ
とこんな感じでやるのが良いようです。
とにかく自分の環境で育ててみよう
最後になりますが、ブルーベリー栽培が気になったなら、まずは実際に育ててみるのが一番です。その上で様々な症状が顕われるでしょうから、その度にインターネットで検索すれば該当する症状がヒットすると思いますので、それらを参考に自分で実際に対処してみることが何より大事なことです。
- 木を手にいれる
- 世話をして育てる
- 症状を発見する
- 調べる
- 対策を講じてみる
- 結果を検証する
場所や生活スタイルによって、樹の環境は大きく異なります。会社勤めの人や自営業の人。畑で育てる人やベランダで育てる人。それぞれがそれぞれの環境を持っているわけですから、上記のようなことをやりながら、自分にぴったりな付き合い方を見つけるのが一番だと思います。時間はかかりますけどね。