みなさん、ナガミヒナゲシという植物をご存知でしょうか?この植物は芥子(ケシ )の仲間で、春にオレンジ色の花を咲かせます。密生して一斉に濃いオレンジ色の花を咲かせるので非常にキレイなのですが、一方でその強力で爆発的な繁殖力で非常に厄介な植物でもあります。
中にはその繁殖力の強さから見せるキレイな花姿を好んで自宅に咲いているままにしている方もいるかもしれませんが、おそらくそれは自分の知る範囲外に繁殖域を広げている可能性が大きいので、気をつけなければいけません。風邪などで飛ばされることはもちろん、靴や自転車や自動車のタイヤに付着してあらゆる場所へ運ばれ、繁殖域を広げるのです。
ここでははそんなナガミヒナゲシの成長の様子を記録していきます。
ナガミヒナゲシとは
- 地中海原産で、日本には輸入穀物などに紛れて渡来したと推測され、自生している
- 関東を中心とする自治体で、要注意外来生物には指定されていないが駆除の呼びかけが行われている
- 一つの花の種子から1000−2000もの種子をばら撒く、1株からだと15万粒もの種子になることも
- 未熟な種子にも萌芽力があるため、開花以降の種子は端っこに積んでおくのではなく必ずゴミに捨てる
- 秋に発芽したものは、ロゼット状になって越冬する
- 春から夏にかけても条件が揃えば発芽し続ける
- 日当たりが良ければ土壌を選ばずどこでも育つ(東北ー沖縄)
- ケシ (芥子)とはいうが、麻薬の原料になる成分はない
- アレロパシーといわれる、他の植物の生育を抑制する成分を妨げる成分を分泌する性質を持つ
- 株の大きさに関係なく開花するので注意、草丈3cmほどから50cmほどのものまで幅広い大きさで開花させます
上記のように、とにかく繁殖力が強い上に花がキレイなヤバイやつだと覚えておいてください。
ナガミヒナゲシのヤバイところ
アレロパシー
アレロパシーとは
ある植物が他の植物の生長を抑える物質(アレロケミカル)を放出したり、あるいは動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりする効果の総称。邦訳では「他感作用」という。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
つまり簡単にいうと、その土地で他の植物が争奪ことを阻害し、自分たちだけが育つ場所にしてしまうというわけです。このアレロパシーがあるために、ナガミヒナゲシが一面に咲き誇る姿を目にすることができるわけです。
種子の数が多い
ナガミヒナゲシの一つの花につく実の中には1000〜2000個もの種子が作られます。そしてさらに、一つの株で咲く花の数は100にもなることもあり、その場合一株から作られる種子の数は10万を超える数になることもあります。
種子の寿命が長い
種子の寿命は5年くらいはある。ということはある年に全て抜いて処分したと思っても、少なくともそこから4年は生えてくる可能性があるということ。。
花がキレイなところ
ナガミヒナゲシの花はオレンジ色で、さらにあれロパシーの効果か、群生して広い面を覆うようにして咲くことが多いです。すなわち、キレイなのです。そのキレイさゆえにやまね農園で発生したナガミヒナゲシはそのままにされ、かなりの範囲を覆い尽くすようになっていました。
ナガミヒナゲシの成長サイクル
秋に発芽し冬は養分を蓄える(補足:春から夏にかけても発芽する)
ナガミヒナゲシが発芽するのは秋。気温が下がるとともに、発芽します。概ね11月くらいまでに発芽し、ロゼット状に葉を広げ、冬を越します。ロゼットとは
ロゼットという言葉は、元来はバラの花から由来する言葉で、八重咲きのバラの花びらのような配列を現す言葉である。したがって、やや細長くて多少とも平らな構造や器官が一か所に集まり、放射状や螺旋状に配列するもののことをロゼット、あるいはロゼット状と表現する。
その用途として、最もよく聞かれるのが植物の茎と葉のようすを表す植物用語である。茎がほとんど節間成長しないため、地上茎が無いか極端に短く、葉が放射状に地中から直接出ていること、あるいはそれに近い状態をいう。そのような葉を根出葉というが、つまり、ロゼットと言うのは、根出葉が円盤状に並んだような植物体を現す言葉である。個々の葉をロゼット葉とも言う。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
根出葉(こんしゅつよう)はロゼット葉(ろぜっとよう)の他に、根生葉(こんせいよう)、根葉(こんよう)と呼ぶこともあるようです。
画像で見るとこんな感じのもの、これはうちの庭に生えてたもの、種類はわからないです。
このように地面に沿うように葉を広げたものことです。このように地面に這うように葉を広げるので、他の植物の中、例えば芝やクラピアの中に生えると非常に抜きにくいです。
このロゼット状で、寒い冬でも光合成をし、長く深く伸ばした根の中に養分を蓄えていきます。
補足:春から夏にかけても発芽する
ナガミヒナゲシの発芽ですが、種子の環境が整いさえすれば発芽すると考えていいと思います。つまり、春に花が咲き種子が撒かれ、夏を越し秋が来た時に、種子が発芽できる環境であれば発芽し、発芽できる環境になければ種のまま冬を越す、ということです。
地中深くに入り込んでしまったり、水分が届かないような場所にあると発芽せずに、自分に適した場所に移動する機会を伺っているということが言えそうです。
春から初夏にかけて花を咲かせ種子を作り撒き散らす
春が来て暖かくなると、冬の間はロゼット状だったものが高く伸びはじめ、50cmほどの高さになります。また、一方で10cm程度の高さにしかならないものもあります。しかしいずれの高さであっても、その大きさに見合ったサイズの花を咲かせ種子をつけます。特にこの小さなサイズの種子はなかなか目につかないことも多く、しっかりと駆除するには注意深く観察する必要があります。
ナガミヒナゲシをしっかり駆除するための注意点
箇条書きにします。
- 除草剤は身体に悪い可能性もあるので進めていません、ひたすら抜くことをお勧めします
- 未熟な種子であっても発芽能力を備えているため注意が必要です。摘み取ったものはできるだけゴミ袋に入れて各自治体の区分けに従った方法でゴミとして出すことをお勧めします。
- 50cm程度のサイズになるものだけでなく、5〜10cm程度の小さなサイズのものも花を咲かせて種子を作るので注意してください。
- その花だけを目安にしない。ナガミヒナゲシの花弁は散りやすいので、すぐに周りの緑の中に埋もれてしまいます。花弁だけでなく、その葉や茎の姿をしっかりと追いかけましょう。
ナガミヒナゲシ成長記録
2020年11月末
ご覧のように同じ場所から密生して生えてきていますが、単純に種子がまとまって残っていたのか、はたまたアレロパシーの影響なのかわかりません。
当地はもう霜が降りていますが、まだそこまで地面に這う感じにはなっていません。
しかし根はだいぶ長くなっています。これが冬の間にどれだけ長くなり、太くなるのか楽しみです。
2021年3月3日
前回の様子、2020年の11月末からの変化を比べてください。冬の間にこれほどまでに大きく成長し、ロゼット状にひろがっています。
今か今かと、爆発的に成長するタイミングを見計らっている。そんな表情を湛えているようにみえてしまいます。それでは画像を。
最後に少しだけ間引きました。
冬の間はロゼット状に葉を広げていましたが、たんぽぽのように地面にベタッとつくような感じではありませんでした。
2021年3月29日
前回少し間引いたのですが、このボリュームに。だいぶ暖かくなってきたので、ロゼット状ではなくなり、もりもりと空へと向かった葉を茂らせています。
今回も少し間引きました。この生育力だと他の植物への悪影響が心配されます。ちなみに近くにある木は桜、旭山桜です。
2021年4月6日
最初にこちらの画像から。この小さいのもナガミヒナゲシ なのですが、これまでうちでの成長を追ってきたものと比べるとすごく小さいです。
これは、秋に発芽して冬越ししたものと、春に発芽したものとの違いです。冬越ししたものは大株に育っていますが、春に発芽したものは小さい。しかしその大きさに騙されてはいけなくて、このナガミヒナゲシは大きさにかかわらず開花します。小さくてもしっかり開花し、種子をばらまくので中しなければいけません。ちなみに冬越しした、成長を記録している株はこちら。
ついに蕾をつけました。
車に乗っていると道路端で既に開花している株も見かけます。きれいなんですけどね。。。
2021年4月16日と18日
ついに開花しました。うちの周辺でも既に開花しているところもあったので、ちょっと遅めかなとも思います。
垂れ下がった蕾が立ち上がって翌日かその次の日くらいには開花しました。草丈は63cmくらい。開花すると、すぐに花は散ってしまいます。桜よりも早いんじゃないかな。
補足しておくと、ナガミヒナゲシは全てがこのくらいの大きさになるわけではなく、ごく小さなものもあります。次の画像を確認してください。
抜いた根まで含めても10cmに満たないような小さな株のものもあるんです。そしてこういう小さな株の方が危険かもしれません。何せ目につかない。存在に気づかないままになってしまうことが多々あります。
どうしてこんなに小さいのかといえば、まずこの春に芽吹いたということ、そして、芽吹いた場所が砕石の隙間のような荒地っぽいところだったこと、などが上げられます。気温と水気があれば発芽してしまうので注意が必要です。
そして2日後の4月18日には第二陣が開花しましたが、写真に収めようとしたときには既に散ったあとでした。。
この花が散った後の膨らんだこの実の部分には、1500粒もの種子が入っているとか。
最後に間引きして、引き続き観察していきます。
2021年5月16日、抜き取りました
さて、今まで観察してきた我が家のナガミヒナゲシ ですが、本日をもって抜き取ることにしました。
一株だけ残っていたそれが、ものすごく大株に成長しました。
種子は少なくとも40程度はついていますし、まだこれから花を咲かせようとしています。
他の場所にはこんな小さなものも。
どこにでも生えているので、今後はそんなどこかに生えているものなどを利用して実験してみようかと思っています。
2021年7月7日、じっくり探せばまだまだいます
さて、春に一斉に開花してその美しい姿を楽しませてくれていたナガミヒナゲシ ですが、その時期をすぎると全くといっていいほど見かけません。その理由としては
- 群生している姿の印象が強すぎて、一輪で咲いていても気づかない
- 暑い時期になると、大きい株のものは既に枯れてしまっていて、小さい株のもが点在しているだけ(ほぼ夏になってから発芽したものと思われます)
- 気温が高くなると枯れてしまう
- 草刈りで切り倒されたり、隠れてしまう(うちの周辺ではこれがいちばんの理由かもしれません)
- 梅雨時期の雨で咲いた花弁がすぐに取れてしまう
特に要注意なのは、雨で花弁がすぐに取れてしまうことでしょうか。ナガミヒナゲシ の花は、すぐに散ってしまいますので、逆に言えば駆除しようと気にしていても赤い花弁が簡単に散ってしまうので気づきにくいのです。
というわけで、この時期でもまだまだその姿を見つけることはできます。画像は、ちょうど梅雨の合間に見つけた花。
2022年5月 今年もやっぱりナガミー
昨年の夏までに気付いたナガミは全て抜き取り、またその後の秋に発芽したものも抜き取ったつもりでいたので、今シーズンはまあ大丈夫だろうと高を括っていたのですが、やっぱりそこはナガミ、春になるとあちこちで発芽した姿を見せ、それが延々と続いています。ナガミの種子は2〜3年は生き続けるそうですからね。
また、ナ目につくところに生えるのであればいいのですが、ナガミのすごいところは
開花するまで他の草の中に姿を隠していられる
というところにあります。次の画像は、まだ開花前なのですが、開花に向けて花の穂を立ち上げてきたために見つけることができた株です。近くに別の開花ナガミがいたので周辺をしっかり探して気づくことができました。
で、これが翌日になると次の画像な感じに。
で。これがさらに翌日になるとこんな感じになります。
全く気付いていなかったのですが、もう一株同時に開花しています。右側に咲いているのがずっと追ってきていた株なのですが、また厄介なのがこの花弁が簡単に落ちてしまうんですよね。花弁が落ちてしまうと、周りの緑に溶け込んでしまって見つけるのが困難になります。
ちなみにこの2株のサイズがどのくらいかというと、それが次の画像。
こんなサイズのものが、こんな感じで他の植物の中に溶け込んでいたら、全てを見つけ流のは不可能でしょう。
で、こうやって残った種子が、伸びすぎた草を刈ったりした中に紛れ込んで拡散し、また新しい場所で繁殖していくというサイクル。。
これはもう、この時期の風物詩として受け入れるしかないのかなと思ったりしています。風物詩といっても、もちろんナガミ抜き取るという作業のことで、花を楽しむ方向へシフトさせるなんてことではないことを付け加えておきますが。
近頃は、出先の駐車場なんかでナガミが咲いているのを見ると反射的に抜き取りそうになってしまいます。